今週のエスパードラゴン調整記録はお休みです、今週もゲームデーの時と同じ内容で挑む見込みです。
今回は指向を変え、ちょっとしたお話を書いてみました、後悔はしている(笑)
※ここから先は長文注意、二次創作(?)なため、嫌な人はスルー推奨、回れ右。
また個人的な主観や間違ったり、偏った知識で書かれている可能性もあります、文書の書き方も適当な感がありますので、ご注意をば。
それとわかりきった話ですが以下の話はフィクションです、登場人物やお店は現実に存在しません。※
Act.1 「現役学生の懐事情」
____市内某カードショップ内にて。
「ねぇ、今スタンのカード高くない?」
帰り寄った行きつけのショップのシングルカードが並ぶショーケースを見つめていた同じ部員の葉月紗綾が俺にボヤく。
「……んっ?高いって、その《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》か」
彼女の視線の先にあるカードを見ると不思議な盾のような物を構えた男性のカードがあった。今月発売されたエキスパンションの神話レアで先日のプロツアーで多数採用されたあと、一気に値段もうなぎ登りだ。今や7000円で買えれば安いと誰もが言うだろう。
「そうよ、こいつっ!8000円って何、バカにしてんの!」
「カードの値段は人気の現れだからなぁ、あんだけ使われば高くなるだろ」
色さえ合えば4枚入れてもいい位なので大体の有名デッキにはフル投入される。
ネットが普及し、強いデッキを誰にでも組めるようになってデッキをコピーする人が増えるとそのカードもかなりの数が必要になる。
……わかりやすく、単純な流れだ。
「この金額って、スタンのカードじゃなくない!?どう見ても最低でもモダン、またはレガシー級でしょ!」
確かに、俺もこの金額はヤバイとは思う。生産されなくなった下のフォーマットの一線級のカードの価格に近い。
しかし、前例が無い訳でもなく……。
「……ユウ、『《精神を刻む者、ジェイス》だって高かったじゃねーか』って言おうとしたわよね、あれはあれよ、完全にぶっ壊れてたじゃない!」
言う前に先を越された。
《精神を刻む者、ジェイス》、強過ぎてプレイヤーが不快になり、各種イベントの参加率が下がった事をキッカケに禁止カードに指定された凶悪なカードだ。その強さはそれを倒す為に他のジェイスをデッキに入れるプレイヤーまで現れた程だったと記憶している。
「それにアイツもよ、《ヴリンの神童、ジェイス》!何よ、買い取り8000円って!一体いくらで売るつもりよ!」
「いま相場12000円ぐらいだっけ、確か。」
《ヴリンの神童、ジェイス》、またジェイスだ。
こいつも高い、初動は1100円位だった筈なのにいつの間にか諭吉さんでは足りないところまで登りつめた、世間ではまだ上がるんじゃねぇかとの声もある。
「……まぁ紗綾ちゃん落ち着いてね、営業妨害だから。これ以上騒ぐと追い出すよ?」
「「あっ、店長(さん)、スイマセン」」
ショーケースの横から顔を出したのはこの店の店長である岡田さんだ。
のほほーんとして、笑顔が似合う温厚そうな見た目だが、時々繰り出される棘のあるセリフは聞いた客に恐怖を植え付けるという噂だ、俺自身は聞いたことは無いが。
「だって、事実高過ぎるでしょ。あれじゃ手軽にスタン始められないよ?」
カウンター前に移動し、向き合うような立ち位置になり岡田さんに紗綾が言う。
「さっき、悠介君が言ったみたいに人気カードだからね。あの金額でも買う人はいるんだよ、今日だけで2枚位は売れてるかな?」
「……マジ?その人は金持ちか何かかにゃー?」
今が18時過ぎなので開店してから2時間程か、大したものだと思う。到底俺のようなただの学生には出来ない行動だ。
「大人の方だったかな。MTGも長くなってプレイヤーの層も広いからね、あの金額を出せる人もいるんだよ」
「……確かにGPTとかも俺たちより大人の人の方が多いですもんね」
20年も続くとプレイヤーも様々だ。
俺のような年から初めて気付けば30歳近い人もそれを超える人もいる。どこかのGPで60歳を超えた人が出ていてちょっと話題になっていた。
「それでも店からしても高いかなとは思うんだよ?なにせ、あの神ジェイスより上だからね」
「じゃあ、安くして下さいよー、あと2枚必要なんですー」
ふてくされた顔で紗綾が言う。
先日から「ジェイスが足りないっ!あと2枚、あと2枚なんだけど」とブツブツ言ってたのを思い出した。
「それは出来ないね、本部がつけた値段だからね」
「本部?……ああ、そう言えばここはフランチャイズでしたね」
コンビニやファーストフードのようにカードショップもフランチャイズ契約なるものがあると聞いた事があった。
確かにここは某大手と似た名前だなと思って、以前聞いた際に教えてもらっていたのだった。
「でもね、高いにも色々訳があるんだよ。実店舗は維持費の兼ね合いで通販だけの店よりは高い。某ショップなんかはぼったくりだって言われてるけどかなり店がデカイからね、通販の方にも皺寄せが来ているのさ」
「○レ×ヤさんの悪口はそこまでよ」
……おいおい、あえてツッコまんぞ。
「また、《ヴリンの神童、ジェイス》なんかはもっと別の理由もあるんだけどね」
「別の理由、えーとイケメンだから?」
「……イケメンか?」
そんな理由ではないだろ、MTGはキャラクターを全面に 押し出しているTCGとは違う筈だ。
まぁ、その部分を見て買う人間もいるだろうが。
「それはね、基本セットのカードだからだよ。更に今回は再録がほぼ無いと来てるからね」
再録が無い、そんなこと言っていたっけ?そんな事は聞いた記憶がないんだが。
その時、考えていた俺の横で紗綾が何かわかったらしい、指を立てて言った。
「わかった、今後基本セットが無くなるからね!」
……ああ。
そんな事、マローが言ってたな。スタンの周期が変わるんだっけ。
しかし、そのドヤ顔がイラッと来るな、おい。
「ギリギリ半分ぐらい正解かな」
「「……半分?」」
岡田さんの意味有りげな答えに思わずハモってしまった、半分って何だ?
他に理由が有るから半分なのか?
「まず、再録に関してだけど第一に基本セットが無くなるからっていうのは正解、これによりカードの再録は理由がない限り難しくなる。次にギミックの問題だね。両面カードというのはメカニズムとしては非常に使いにくい、ドラフトだとバレちゃうしね。最後にキャラクター性だね、オリジンだからできる目覚める前の姿のカード化。これもキャラクターとしては大事なんだけど、話を進めていくうえでは、今後出る必要が無いからね」
言われてみればそうかもっていう理由ばかりだ。両面カードなんてもう作る事ないと思ってたし、マローもメインストーリーを進めるためにブロックを2個のエキスパンションにするって言ってた気がする。
あと過去の姿なんて見ることすら無いだろうと思ってた。それは横の奴も同じだ、オリジンのリリアナが公開されたとき、異常に興奮してたからな。
『……フフッ。リリィ、ふつくしい、ふつくし過ぎる。コレは確実にゲットよ、ゲットするしかないわっ!』
あの時は……正直引いた。
「そんなに理由があるのに何で❝ほぼ❞なのよ」
ごもっとも、コレは確実に無いだろう。でも、岡田さんは❝ほぼ❞って言っていた、俺もそれが気になった。
「まぁ、モダマスがあるかもしれないからね。その為の❝ほぼ❞なんだよ」
「「ああー」」
その手があった、前回全然買えなかったので完全に忘れていたが。
「モダマスに関しては長くなりそうだから止めとくとして、次に高くなるもう1つの理由というか条件っていうのがあるんだ」
モダマスに関してはあまりいい思い出がないのでスルーしてくれて助かった、危なく古傷が疼くところだったぜ。
しかし、もう1つの理由ではなく条件って何だ。
「もったいぶらないでよ。気になるじゃん」
「ごめんごめん、実は基本セットってあまり数が剥かれないんだよ。スタン環境で使える期間が短い上に再録カードが中心だからね。プレイヤー側も欲しいカードのために剥くけど再録カードを手に入れる可能性も高い、それにMTGだけじゃないけどパックを買う人間って既存ユーザーが多いだろ?やってる年数が長ければ長い程、再録カードを元々持っている人も多いんだ」
まぁ、基本セットならではの弊害というやつか。
新規で買う分には関係ない話だがベテラン勢は面倒な話だよな、部長も……。
『《ガイアの復讐者》か、強いんだけど前の分があるからなぁ、他のカードが欲しかったんだけど……』
『……《プレインズウォーカー、ニコル=ボーラス》、ファイルにいっぱい入ってんだけどー』
そんな事、苦い顔して言ってたな。
「他のエキスパンションほど剥かれないから、そこでしか収録されないカードは値段が上がる、更に強い、複数枚いるなどの要素が重なった結果って感じかな。あとはオリジンはレア枠に《搭載歩行機械》位しか高いカードがないからね、ショップもシングルの為に剥いても元を取るのが大変なんだよ」
商売だからねと岡田さんが付け加え、話を区切った。
理屈もわかる、《かき立てる炎》や《若き紅蓮術師》もアンコとは思えない程シングルが高かった。某プロも『足りなかったけど《若き紅蓮術師》高いじゃん』みたいなことを言ってたな、あれはレガシーでも使うからな。
「あと《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》も理屈自体は近いんじゃないかな?」
「ええー、何でですか、新ブロックの第1弾って数が剥かれないってことないでしょ?」
確かに俺たちも部費や小遣いでそこそこは剥いていた筈だ、基本セットと違い大きい大会でリミデッドもあるから他のプレイヤーも必然的に数を剥く筈だけど。
「それにフルアート土地があったから私も剥きまくってたけど、皆同じじゃないの?」
フルアートの基本土地、旧ZENブロックで採用され、今でも基本土地とは思えない程の値段で取引きされるカード。
通販ではそのカード目当てにファットパックが買い占められ、普段と違い完全にプレ値になっていた。
「そうそう。ようやく、スタンを含め全てのデッキの基本土地がフルアートになるからラッキーだったな、個人的には」
「……でしょ?」
上から下まで念願のフルアートになったのは今回のBFZのお陰だろう、前は兄貴に回収されたからな。アイツだけそれを元手に先に土地をfoilのフルアートで揃えやがって……。
……んっ、フルアートで土地?
「……あっ」
「……何よ、間抜けな声出して」
「悠介君は大体わかったみたいだね、理由が」
アレだ、兄貴もヤケクソで揃えていたヤツだ。この前、俺に見せつけて来たやつに違いない。
「理由って、もしかしてZendikar Expeditionsがあるからですか?」
Zendikar Expeditions。
トレジャー枠に今回導入されたプレミアムフルアート土地。
内容としてはフェッチランドとショックランド、そして今回のバトルランドで構成されたカード群だ。中でもフェッチランドのフルアートはヴィンテ勢からスタン勢まで需要があり、非常に高価で取引きされている。
「あくまでも僕個人の考えだけどね。先程のジェイスと同じくセット自体に優良なレアが少なく、ショップ側も剥く旨味があまりない上、Zendikar Expeditionsは神話レアのfoilよりは出やすいが異常なほど需要がある。となるとそれを扱うため剥いた分の皺寄せが人気カードやZendikar Expeditionsに集中しゃうんだろうね。今回はその標的が《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》だったんじゃないかな?」
言い分もわからなくはないがスタンのみのプレイヤーからしてみればたまったもんじゃないな。スタンでほぼ使えないZendikar Expeditionsが高くなるならまだしも、スタンの優良なカードに皺寄せをされたんでは。
「……用はお前達のために開けて並べてやってんだから我慢しろよってこったっよ、コイツの言い分は」
「げっ、兄貴」
「どーも、先輩」
「……来て早々ひどい言い様だね、彰」
スーツ姿の兄貴が店に入って来て早々、嫌味を言う。スーツということは丁度、仕事帰りらしい。
俺の兄貴である坂上彰は俺達の部活のOBで、プロツアーにも度々参加しているこの地区だと結構名の知られたプレイヤーだ。
「……と言っても、その金額でも買う奴がいるから店もそこまで上げてくれやがるんだから、買う側も売る側もまぁ、どっちもどっちだよな」
「店からしたら不良在庫になるのは困るから売れなきゃ値を下げるからね。スタンのカードなんて旬を過ぎると暴落してしまうし」
確かに2人の言い分もわかる。
買う奴がいるから店も高値で買い取るし、高く売る、そのほうが利益になるからな。
だが、売れなければ店も金額を下げないといけない。
お互いの利害が一致したからこその値段な訳だ。
「そんなの社会人の言い分よね、私たちはそんなにお金出せないもん」
「だったら安価でいいデッキを組め。高いカード入れたからってそのデッキが最強ってわけは無いんだからよ、最近だったらアタルカレッドだって安いけど強いだろ」
買えないなら工夫しろっていう言い分も理解できるが、高いカードをガン積みのデッキ所持者の兄貴言われるとマジ腹が立つな。
「それにカードが高くてスタンが出来なきゃリミデッドをやれ、現スタンのシナジーやテクのあまり必要のない札束を叩きつけるゲームよりはその方が断然練習になる。何も高いカードを使うのがMTGじゃないだろうが」
「地味に営業妨害だからな、彰。仮にもプロプレイヤーがその言い草は」
……スタンが出来なきゃリミデッドをやれ、か。
「仕方ねぇ、買い物に来たついでにOBである俺が後輩の貧乏学生にパックを寄付してやるから運試しに引いてみ、高いカード出たって取り上げたりしねぇからよ」
「……貧乏って、でも頂きます」
「……嫌味か、クソ兄貴。でも頂きます」
俺達を横目にカードファイルが並んだ棚を漁る岡田さんと財布をゴゾゴゾする兄貴、しかしコイツは何を買いに来たんだ?
「注文は《沸騰する小湖》のZendikar Expeditions版だったかな、彰?」
「イエス、イエース。これでミラクルが黒枠で可能な限りのフルfoilだ、サンクス」
「まったく物好きだよね、彰は」
うん、あえて聞かなかったことにする。
紗綾もそのつもりでパックを凝視していたようなので俺も買うパックを決める方に集中する。
「私はオリジンにするわ、まだ欲しいカードもあるし」
……ジェイスまたはリリアナ狙いか、ならば。
「俺もオリジンで」
まだ俺も《搭載歩行機械》が欲しいしな。
「折角だしな、俺は新弾のBFZを買うぜ。悠介、出たレアの金額で今日の風呂の順番を決めようぜ」
突然の申し出にちょっと悩んだが、今回元手ゼロでしかも、風呂掃除を押し付けることができるのはありがたい。
「……分かった、望むところだ」
だから俺は受けることにした。
ちょっと金額勝負にはパックが悪いとは思いつつも、後々ぐだぐだ言われても鬱陶しいし。
会計を済ました兄貴からそのパックを受け取り先に紗綾が開け始める。
「何が出るかなー、ハンガーバックー、ジェイスー、リリアナー。……んっ!?」
先に開封した紗綾がおかしな声を上げる、その後どんどんと顔つきが緩んでいった。
「何が出たんだ、紗綾?」
「フフフっ、これよ《ヴリンの神童、ジェイス》!しかもfoilっ!!」
なんと、完全に勝ち組じゃないか。
欲しいと言っていたカードのfoilを引き当てるとは。羨ましい羨まし過ぎるぞ、それなら完全に勝負には勝っていたのに。
「おめでとう紗綾ちゃん。はい、特別にスリーブ」
「ありがとうございますー、先輩もサンクスですっ」
ニコニコしながらスリーブを受け取りカードをしまう、一方兄貴の方は開いた口が塞がらない状態だった。
「しかもレア枠は《ゴブリンの群集追い》か、悪くはないな」
レアもスタン的には当たりという訳ではないがそこそこのカードだ、下のフォーマットでの需要もあるしな。
「さて、俺も開けてみるか。……んっ、おいおいこの箱は神箱か、俺も《ヴリンの神童、ジェイス》だ」
兄貴にドヤ顔で見せつける。
「……素晴らしい。シングル用に開けても良かったね、その箱は」
タダで貰ったパックから出るには十分すぎるレア、これは完全に勝ちだろう。
兄貴もそう思っているのか明らかにイライラし始めていた。
「おいおい、ふざけんなよ。Zendikar Expeditionsじゃねぇと勝ち目ねぇのか。……くそっ、開けるぞ」
「…………ぐげっ」
「「ぐげっ?」」
意味不明な擬音をあげ、机にひれ伏した兄貴のパックには輝く《プリズム結界》と《プリズム結界》が仲良く並んでいた。
嗚呼、ご愁傷様です。
「……帰るか」
「そうね、帰りましょ」
「ああ、彰。そのカードは買い取りしてないから持って帰ってくれよ」
エルドラージに殺された人間のように白く、色が薄くなっていく兄貴を置いて、3人とも散っていく。
ああ、今日はどうやら気持ちよく眠れそうだ。
_____それから数分後。
「……彰、2人とももう帰ったよ」
「……ったく、世話の焼ける後輩たちだよ、全く」
「喜んでたんだからよかったじゃないか。でも、あそこまで回りくどく渡さなくていいんじゃないか?」
「……そんなの俺の柄じゃないんだよ、それに直接渡して、『次からもお願いしますー』ってなると面倒なんだよ」
「……似てないね。それでもパックをその場で入れ替え、ジェイスを仕込んだパックを開封させて、2人とも喜ばすっていうのは、ねぇ?」
「……職業柄、ああいう顔を見るのが楽しみでな。それにどうせ悠介の事だ、幼馴染のよしみか好意がはわからんが紗綾のヤツにジェイスを渡すだろうなって思ってな」
「……流石は兄弟、そこまで見越してということか」
「ダテに何年も兄貴してねぇよ」
「……しかしね、彼らの言い分は身にしみるよ」
「スタンのカードが高いってやつか、今は確かに高いな」
「その値段を見てからか、結構辞める子が多いんだよ」
「需要があるから高い、欲しいけど買えないから辞める。その気持ちはわかる気はするがな、だがな……」
「……だが?」
「……それは他のやり方を教えてやればいい、さっきあいつ等にも言ったが高いカードを使った構築戦のみがMTGじゃねぇ。やり方がわからないんだったらそれは俺たち大人や周りが教えてやる、それが俺らのやる事だろ」
「そもそも俺たちがあいつ等ぐらいの時には、やってる奴は少なかった、相手を探すのが必死だったぐらいだ。今やすぐ側に相手がいる、だから高いから辞めるって言うのは勿体無いぜ」
「……確かにね」
「……やり方を教えるか。そうだね、うちもマジック・リーグでも始めてみようかな?」
「ああ、いいんじゃねぇか?そうやってコツコツと前に進むしかねぇよ。まぁ、俺も可能な限りは裏からサポートしてやんよ」
「それは柄じゃないじゃなかったのかい?」
「……だから裏からだっつーの、ウ・ラ・か・ら!」
「わかってるよ。その時は頼むよ、プロプレイヤーさん」
「……おう」
>>>To be continued……?
___________
今のスタンのカード高いなぁ、でも折角始めてくれたのに辞めてしまうのは勿体無いなぁ。……そんな気持ちを込めて勢い任せに書いてみました。
落としどころがつかず、その上地の文が無駄にあり長くなったですね、文書中に誤字や変な所があったらスイマセン。
素人なんで多めに見てくだされ。
ネタがあったら続くかもしれませんので一応下にキャラクター解説を書いておきます。
▼坂上悠介
・主人公だが目立った身体的特徴は特になく、顔も中の上より程度。
小さい頃に兄の影響でマジックを始め、安い頃にお小遣いでカードを買い続けたため、一通りのフォーマットを嗜める程度にカードを持っている。
現役高校生でマジック部に所属、因みに本編中の古傷とはたまたま買えたMM2で《彗星の嵐》foilを引き当てたこと。
このお話は彼視点で進み、後半が台詞だけなのは彼がその場にいない為。
普段使用デッキは赤系速攻(スタン)、Zoo(モダン)、親和(レガシー)。
▼葉月紗綾
・この話の一応ヒロインらしい高校生。
黒髪ポニーの悠介の幼馴染で彼が友人と楽しそうにMTGをやってる姿を見て、プレイを始めた。
基本はスタン専だが、悠介譲りの知識で多少は下の環境の知識もある。
性格が明るく体格が小さいため、クラスの女子からはマスコットとして見られているフシがある、なお、絶壁の模様。マジック部に所属。
普段使用のデッキは青黒系コントロール。
▼岡田さん
・彼ら行きつけのカードショップの店長、彼らの高校のOBで先輩にあたる。
今でこそ現役を退くものの他のプレイヤーがMTGをしやすい環境づくりの為に実家のおもちゃ屋を継ぎ、カードショップへと作り変えた。
なお、ショップに並ぶ古いカードは彼が持っていたものが殆ど。
▼坂上彰
・現役プロプレイヤーにして悠介をMTGに引き込んだ人物。
様々なフォーマットをプレイしており、普段はプロのマジシャンとして色々な所を飛び回っている。
実力はこの町のMTGプレイヤーでは知らぬ者はいない程高い。
普段使用のデッキはアブザン(スタン)、グリコン(モダン)、ミラクル(レガシー)。
▼部長
・マジック部現在部長、3年女子。ファイルにやたらと《プレンズウォーカー、ニコル=ボーラス》が入ってるらしい。
……といった所。
うん、慣れないことはするもんじゃないな、無駄に疲れる。
今回は指向を変え、ちょっとしたお話を書いてみました、後悔はしている(笑)
※ここから先は長文注意、二次創作(?)なため、嫌な人はスルー推奨、回れ右。
また個人的な主観や間違ったり、偏った知識で書かれている可能性もあります、文書の書き方も適当な感がありますので、ご注意をば。
それとわかりきった話ですが以下の話はフィクションです、登場人物やお店は現実に存在しません。※
Act.1 「現役学生の懐事情」
____市内某カードショップ内にて。
「ねぇ、今スタンのカード高くない?」
帰り寄った行きつけのショップのシングルカードが並ぶショーケースを見つめていた同じ部員の葉月紗綾が俺にボヤく。
「……んっ?高いって、その《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》か」
彼女の視線の先にあるカードを見ると不思議な盾のような物を構えた男性のカードがあった。今月発売されたエキスパンションの神話レアで先日のプロツアーで多数採用されたあと、一気に値段もうなぎ登りだ。今や7000円で買えれば安いと誰もが言うだろう。
「そうよ、こいつっ!8000円って何、バカにしてんの!」
「カードの値段は人気の現れだからなぁ、あんだけ使われば高くなるだろ」
色さえ合えば4枚入れてもいい位なので大体の有名デッキにはフル投入される。
ネットが普及し、強いデッキを誰にでも組めるようになってデッキをコピーする人が増えるとそのカードもかなりの数が必要になる。
……わかりやすく、単純な流れだ。
「この金額って、スタンのカードじゃなくない!?どう見ても最低でもモダン、またはレガシー級でしょ!」
確かに、俺もこの金額はヤバイとは思う。生産されなくなった下のフォーマットの一線級のカードの価格に近い。
しかし、前例が無い訳でもなく……。
「……ユウ、『《精神を刻む者、ジェイス》だって高かったじゃねーか』って言おうとしたわよね、あれはあれよ、完全にぶっ壊れてたじゃない!」
言う前に先を越された。
《精神を刻む者、ジェイス》、強過ぎてプレイヤーが不快になり、各種イベントの参加率が下がった事をキッカケに禁止カードに指定された凶悪なカードだ。その強さはそれを倒す為に他のジェイスをデッキに入れるプレイヤーまで現れた程だったと記憶している。
「それにアイツもよ、《ヴリンの神童、ジェイス》!何よ、買い取り8000円って!一体いくらで売るつもりよ!」
「いま相場12000円ぐらいだっけ、確か。」
《ヴリンの神童、ジェイス》、またジェイスだ。
こいつも高い、初動は1100円位だった筈なのにいつの間にか諭吉さんでは足りないところまで登りつめた、世間ではまだ上がるんじゃねぇかとの声もある。
「……まぁ紗綾ちゃん落ち着いてね、営業妨害だから。これ以上騒ぐと追い出すよ?」
「「あっ、店長(さん)、スイマセン」」
ショーケースの横から顔を出したのはこの店の店長である岡田さんだ。
のほほーんとして、笑顔が似合う温厚そうな見た目だが、時々繰り出される棘のあるセリフは聞いた客に恐怖を植え付けるという噂だ、俺自身は聞いたことは無いが。
「だって、事実高過ぎるでしょ。あれじゃ手軽にスタン始められないよ?」
カウンター前に移動し、向き合うような立ち位置になり岡田さんに紗綾が言う。
「さっき、悠介君が言ったみたいに人気カードだからね。あの金額でも買う人はいるんだよ、今日だけで2枚位は売れてるかな?」
「……マジ?その人は金持ちか何かかにゃー?」
今が18時過ぎなので開店してから2時間程か、大したものだと思う。到底俺のようなただの学生には出来ない行動だ。
「大人の方だったかな。MTGも長くなってプレイヤーの層も広いからね、あの金額を出せる人もいるんだよ」
「……確かにGPTとかも俺たちより大人の人の方が多いですもんね」
20年も続くとプレイヤーも様々だ。
俺のような年から初めて気付けば30歳近い人もそれを超える人もいる。どこかのGPで60歳を超えた人が出ていてちょっと話題になっていた。
「それでも店からしても高いかなとは思うんだよ?なにせ、あの神ジェイスより上だからね」
「じゃあ、安くして下さいよー、あと2枚必要なんですー」
ふてくされた顔で紗綾が言う。
先日から「ジェイスが足りないっ!あと2枚、あと2枚なんだけど」とブツブツ言ってたのを思い出した。
「それは出来ないね、本部がつけた値段だからね」
「本部?……ああ、そう言えばここはフランチャイズでしたね」
コンビニやファーストフードのようにカードショップもフランチャイズ契約なるものがあると聞いた事があった。
確かにここは某大手と似た名前だなと思って、以前聞いた際に教えてもらっていたのだった。
「でもね、高いにも色々訳があるんだよ。実店舗は維持費の兼ね合いで通販だけの店よりは高い。某ショップなんかはぼったくりだって言われてるけどかなり店がデカイからね、通販の方にも皺寄せが来ているのさ」
「○レ×ヤさんの悪口はそこまでよ」
……おいおい、あえてツッコまんぞ。
「また、《ヴリンの神童、ジェイス》なんかはもっと別の理由もあるんだけどね」
「別の理由、えーとイケメンだから?」
「……イケメンか?」
そんな理由ではないだろ、MTGはキャラクターを全面に 押し出しているTCGとは違う筈だ。
まぁ、その部分を見て買う人間もいるだろうが。
「それはね、基本セットのカードだからだよ。更に今回は再録がほぼ無いと来てるからね」
再録が無い、そんなこと言っていたっけ?そんな事は聞いた記憶がないんだが。
その時、考えていた俺の横で紗綾が何かわかったらしい、指を立てて言った。
「わかった、今後基本セットが無くなるからね!」
……ああ。
そんな事、マローが言ってたな。スタンの周期が変わるんだっけ。
しかし、そのドヤ顔がイラッと来るな、おい。
「ギリギリ半分ぐらい正解かな」
「「……半分?」」
岡田さんの意味有りげな答えに思わずハモってしまった、半分って何だ?
他に理由が有るから半分なのか?
「まず、再録に関してだけど第一に基本セットが無くなるからっていうのは正解、これによりカードの再録は理由がない限り難しくなる。次にギミックの問題だね。両面カードというのはメカニズムとしては非常に使いにくい、ドラフトだとバレちゃうしね。最後にキャラクター性だね、オリジンだからできる目覚める前の姿のカード化。これもキャラクターとしては大事なんだけど、話を進めていくうえでは、今後出る必要が無いからね」
言われてみればそうかもっていう理由ばかりだ。両面カードなんてもう作る事ないと思ってたし、マローもメインストーリーを進めるためにブロックを2個のエキスパンションにするって言ってた気がする。
あと過去の姿なんて見ることすら無いだろうと思ってた。それは横の奴も同じだ、オリジンのリリアナが公開されたとき、異常に興奮してたからな。
『……フフッ。リリィ、ふつくしい、ふつくし過ぎる。コレは確実にゲットよ、ゲットするしかないわっ!』
あの時は……正直引いた。
「そんなに理由があるのに何で❝ほぼ❞なのよ」
ごもっとも、コレは確実に無いだろう。でも、岡田さんは❝ほぼ❞って言っていた、俺もそれが気になった。
「まぁ、モダマスがあるかもしれないからね。その為の❝ほぼ❞なんだよ」
「「ああー」」
その手があった、前回全然買えなかったので完全に忘れていたが。
「モダマスに関しては長くなりそうだから止めとくとして、次に高くなるもう1つの理由というか条件っていうのがあるんだ」
モダマスに関してはあまりいい思い出がないのでスルーしてくれて助かった、危なく古傷が疼くところだったぜ。
しかし、もう1つの理由ではなく条件って何だ。
「もったいぶらないでよ。気になるじゃん」
「ごめんごめん、実は基本セットってあまり数が剥かれないんだよ。スタン環境で使える期間が短い上に再録カードが中心だからね。プレイヤー側も欲しいカードのために剥くけど再録カードを手に入れる可能性も高い、それにMTGだけじゃないけどパックを買う人間って既存ユーザーが多いだろ?やってる年数が長ければ長い程、再録カードを元々持っている人も多いんだ」
まぁ、基本セットならではの弊害というやつか。
新規で買う分には関係ない話だがベテラン勢は面倒な話だよな、部長も……。
『《ガイアの復讐者》か、強いんだけど前の分があるからなぁ、他のカードが欲しかったんだけど……』
『……《プレインズウォーカー、ニコル=ボーラス》、ファイルにいっぱい入ってんだけどー』
そんな事、苦い顔して言ってたな。
「他のエキスパンションほど剥かれないから、そこでしか収録されないカードは値段が上がる、更に強い、複数枚いるなどの要素が重なった結果って感じかな。あとはオリジンはレア枠に《搭載歩行機械》位しか高いカードがないからね、ショップもシングルの為に剥いても元を取るのが大変なんだよ」
商売だからねと岡田さんが付け加え、話を区切った。
理屈もわかる、《かき立てる炎》や《若き紅蓮術師》もアンコとは思えない程シングルが高かった。某プロも『足りなかったけど《若き紅蓮術師》高いじゃん』みたいなことを言ってたな、あれはレガシーでも使うからな。
「あと《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》も理屈自体は近いんじゃないかな?」
「ええー、何でですか、新ブロックの第1弾って数が剥かれないってことないでしょ?」
確かに俺たちも部費や小遣いでそこそこは剥いていた筈だ、基本セットと違い大きい大会でリミデッドもあるから他のプレイヤーも必然的に数を剥く筈だけど。
「それにフルアート土地があったから私も剥きまくってたけど、皆同じじゃないの?」
フルアートの基本土地、旧ZENブロックで採用され、今でも基本土地とは思えない程の値段で取引きされるカード。
通販ではそのカード目当てにファットパックが買い占められ、普段と違い完全にプレ値になっていた。
「そうそう。ようやく、スタンを含め全てのデッキの基本土地がフルアートになるからラッキーだったな、個人的には」
「……でしょ?」
上から下まで念願のフルアートになったのは今回のBFZのお陰だろう、前は兄貴に回収されたからな。アイツだけそれを元手に先に土地をfoilのフルアートで揃えやがって……。
……んっ、フルアートで土地?
「……あっ」
「……何よ、間抜けな声出して」
「悠介君は大体わかったみたいだね、理由が」
アレだ、兄貴もヤケクソで揃えていたヤツだ。この前、俺に見せつけて来たやつに違いない。
「理由って、もしかしてZendikar Expeditionsがあるからですか?」
Zendikar Expeditions。
トレジャー枠に今回導入されたプレミアムフルアート土地。
内容としてはフェッチランドとショックランド、そして今回のバトルランドで構成されたカード群だ。中でもフェッチランドのフルアートはヴィンテ勢からスタン勢まで需要があり、非常に高価で取引きされている。
「あくまでも僕個人の考えだけどね。先程のジェイスと同じくセット自体に優良なレアが少なく、ショップ側も剥く旨味があまりない上、Zendikar Expeditionsは神話レアのfoilよりは出やすいが異常なほど需要がある。となるとそれを扱うため剥いた分の皺寄せが人気カードやZendikar Expeditionsに集中しゃうんだろうね。今回はその標的が《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》だったんじゃないかな?」
言い分もわからなくはないがスタンのみのプレイヤーからしてみればたまったもんじゃないな。スタンでほぼ使えないZendikar Expeditionsが高くなるならまだしも、スタンの優良なカードに皺寄せをされたんでは。
「……用はお前達のために開けて並べてやってんだから我慢しろよってこったっよ、コイツの言い分は」
「げっ、兄貴」
「どーも、先輩」
「……来て早々ひどい言い様だね、彰」
スーツ姿の兄貴が店に入って来て早々、嫌味を言う。スーツということは丁度、仕事帰りらしい。
俺の兄貴である坂上彰は俺達の部活のOBで、プロツアーにも度々参加しているこの地区だと結構名の知られたプレイヤーだ。
「……と言っても、その金額でも買う奴がいるから店もそこまで上げてくれやがるんだから、買う側も売る側もまぁ、どっちもどっちだよな」
「店からしたら不良在庫になるのは困るから売れなきゃ値を下げるからね。スタンのカードなんて旬を過ぎると暴落してしまうし」
確かに2人の言い分もわかる。
買う奴がいるから店も高値で買い取るし、高く売る、そのほうが利益になるからな。
だが、売れなければ店も金額を下げないといけない。
お互いの利害が一致したからこその値段な訳だ。
「そんなの社会人の言い分よね、私たちはそんなにお金出せないもん」
「だったら安価でいいデッキを組め。高いカード入れたからってそのデッキが最強ってわけは無いんだからよ、最近だったらアタルカレッドだって安いけど強いだろ」
買えないなら工夫しろっていう言い分も理解できるが、高いカードをガン積みのデッキ所持者の兄貴言われるとマジ腹が立つな。
「それにカードが高くてスタンが出来なきゃリミデッドをやれ、現スタンのシナジーやテクのあまり必要のない札束を叩きつけるゲームよりはその方が断然練習になる。何も高いカードを使うのがMTGじゃないだろうが」
「地味に営業妨害だからな、彰。仮にもプロプレイヤーがその言い草は」
……スタンが出来なきゃリミデッドをやれ、か。
「仕方ねぇ、買い物に来たついでにOBである俺が後輩の貧乏学生にパックを寄付してやるから運試しに引いてみ、高いカード出たって取り上げたりしねぇからよ」
「……貧乏って、でも頂きます」
「……嫌味か、クソ兄貴。でも頂きます」
俺達を横目にカードファイルが並んだ棚を漁る岡田さんと財布をゴゾゴゾする兄貴、しかしコイツは何を買いに来たんだ?
「注文は《沸騰する小湖》のZendikar Expeditions版だったかな、彰?」
「イエス、イエース。これでミラクルが黒枠で可能な限りのフルfoilだ、サンクス」
「まったく物好きだよね、彰は」
うん、あえて聞かなかったことにする。
紗綾もそのつもりでパックを凝視していたようなので俺も買うパックを決める方に集中する。
「私はオリジンにするわ、まだ欲しいカードもあるし」
……ジェイスまたはリリアナ狙いか、ならば。
「俺もオリジンで」
まだ俺も《搭載歩行機械》が欲しいしな。
「折角だしな、俺は新弾のBFZを買うぜ。悠介、出たレアの金額で今日の風呂の順番を決めようぜ」
突然の申し出にちょっと悩んだが、今回元手ゼロでしかも、風呂掃除を押し付けることができるのはありがたい。
「……分かった、望むところだ」
だから俺は受けることにした。
ちょっと金額勝負にはパックが悪いとは思いつつも、後々ぐだぐだ言われても鬱陶しいし。
会計を済ました兄貴からそのパックを受け取り先に紗綾が開け始める。
「何が出るかなー、ハンガーバックー、ジェイスー、リリアナー。……んっ!?」
先に開封した紗綾がおかしな声を上げる、その後どんどんと顔つきが緩んでいった。
「何が出たんだ、紗綾?」
「フフフっ、これよ《ヴリンの神童、ジェイス》!しかもfoilっ!!」
なんと、完全に勝ち組じゃないか。
欲しいと言っていたカードのfoilを引き当てるとは。羨ましい羨まし過ぎるぞ、それなら完全に勝負には勝っていたのに。
「おめでとう紗綾ちゃん。はい、特別にスリーブ」
「ありがとうございますー、先輩もサンクスですっ」
ニコニコしながらスリーブを受け取りカードをしまう、一方兄貴の方は開いた口が塞がらない状態だった。
「しかもレア枠は《ゴブリンの群集追い》か、悪くはないな」
レアもスタン的には当たりという訳ではないがそこそこのカードだ、下のフォーマットでの需要もあるしな。
「さて、俺も開けてみるか。……んっ、おいおいこの箱は神箱か、俺も《ヴリンの神童、ジェイス》だ」
兄貴にドヤ顔で見せつける。
「……素晴らしい。シングル用に開けても良かったね、その箱は」
タダで貰ったパックから出るには十分すぎるレア、これは完全に勝ちだろう。
兄貴もそう思っているのか明らかにイライラし始めていた。
「おいおい、ふざけんなよ。Zendikar Expeditionsじゃねぇと勝ち目ねぇのか。……くそっ、開けるぞ」
「…………ぐげっ」
「「ぐげっ?」」
意味不明な擬音をあげ、机にひれ伏した兄貴のパックには輝く《プリズム結界》と《プリズム結界》が仲良く並んでいた。
嗚呼、ご愁傷様です。
「……帰るか」
「そうね、帰りましょ」
「ああ、彰。そのカードは買い取りしてないから持って帰ってくれよ」
エルドラージに殺された人間のように白く、色が薄くなっていく兄貴を置いて、3人とも散っていく。
ああ、今日はどうやら気持ちよく眠れそうだ。
_____それから数分後。
「……彰、2人とももう帰ったよ」
「……ったく、世話の焼ける後輩たちだよ、全く」
「喜んでたんだからよかったじゃないか。でも、あそこまで回りくどく渡さなくていいんじゃないか?」
「……そんなの俺の柄じゃないんだよ、それに直接渡して、『次からもお願いしますー』ってなると面倒なんだよ」
「……似てないね。それでもパックをその場で入れ替え、ジェイスを仕込んだパックを開封させて、2人とも喜ばすっていうのは、ねぇ?」
「……職業柄、ああいう顔を見るのが楽しみでな。それにどうせ悠介の事だ、幼馴染のよしみか好意がはわからんが紗綾のヤツにジェイスを渡すだろうなって思ってな」
「……流石は兄弟、そこまで見越してということか」
「ダテに何年も兄貴してねぇよ」
「……しかしね、彼らの言い分は身にしみるよ」
「スタンのカードが高いってやつか、今は確かに高いな」
「その値段を見てからか、結構辞める子が多いんだよ」
「需要があるから高い、欲しいけど買えないから辞める。その気持ちはわかる気はするがな、だがな……」
「……だが?」
「……それは他のやり方を教えてやればいい、さっきあいつ等にも言ったが高いカードを使った構築戦のみがMTGじゃねぇ。やり方がわからないんだったらそれは俺たち大人や周りが教えてやる、それが俺らのやる事だろ」
「そもそも俺たちがあいつ等ぐらいの時には、やってる奴は少なかった、相手を探すのが必死だったぐらいだ。今やすぐ側に相手がいる、だから高いから辞めるって言うのは勿体無いぜ」
「……確かにね」
「……やり方を教えるか。そうだね、うちもマジック・リーグでも始めてみようかな?」
「ああ、いいんじゃねぇか?そうやってコツコツと前に進むしかねぇよ。まぁ、俺も可能な限りは裏からサポートしてやんよ」
「それは柄じゃないじゃなかったのかい?」
「……だから裏からだっつーの、ウ・ラ・か・ら!」
「わかってるよ。その時は頼むよ、プロプレイヤーさん」
「……おう」
>>>To be continued……?
___________
今のスタンのカード高いなぁ、でも折角始めてくれたのに辞めてしまうのは勿体無いなぁ。……そんな気持ちを込めて勢い任せに書いてみました。
落としどころがつかず、その上地の文が無駄にあり長くなったですね、文書中に誤字や変な所があったらスイマセン。
素人なんで多めに見てくだされ。
ネタがあったら続くかもしれませんので一応下にキャラクター解説を書いておきます。
▼坂上悠介
・主人公だが目立った身体的特徴は特になく、顔も中の上より程度。
小さい頃に兄の影響でマジックを始め、安い頃にお小遣いでカードを買い続けたため、一通りのフォーマットを嗜める程度にカードを持っている。
現役高校生でマジック部に所属、因みに本編中の古傷とはたまたま買えたMM2で《彗星の嵐》foilを引き当てたこと。
このお話は彼視点で進み、後半が台詞だけなのは彼がその場にいない為。
普段使用デッキは赤系速攻(スタン)、Zoo(モダン)、親和(レガシー)。
▼葉月紗綾
・この話の一応ヒロインらしい高校生。
黒髪ポニーの悠介の幼馴染で彼が友人と楽しそうにMTGをやってる姿を見て、プレイを始めた。
基本はスタン専だが、悠介譲りの知識で多少は下の環境の知識もある。
性格が明るく体格が小さいため、クラスの女子からはマスコットとして見られているフシがある、なお、絶壁の模様。マジック部に所属。
普段使用のデッキは青黒系コントロール。
▼岡田さん
・彼ら行きつけのカードショップの店長、彼らの高校のOBで先輩にあたる。
今でこそ現役を退くものの他のプレイヤーがMTGをしやすい環境づくりの為に実家のおもちゃ屋を継ぎ、カードショップへと作り変えた。
なお、ショップに並ぶ古いカードは彼が持っていたものが殆ど。
▼坂上彰
・現役プロプレイヤーにして悠介をMTGに引き込んだ人物。
様々なフォーマットをプレイしており、普段はプロのマジシャンとして色々な所を飛び回っている。
実力はこの町のMTGプレイヤーでは知らぬ者はいない程高い。
普段使用のデッキはアブザン(スタン)、グリコン(モダン)、ミラクル(レガシー)。
▼部長
・マジック部現在部長、3年女子。ファイルにやたらと《プレンズウォーカー、ニコル=ボーラス》が入ってるらしい。
……といった所。
うん、慣れないことはするもんじゃないな、無駄に疲れる。
コメント
foilのギデオン入りのBFZのパックを渡してくれるのはいつ頃でしょうか?
>たくわさん
私にも是非KTKでいいので岸辺や三角州を持ってきて欲しいです。
>リックさん
なお、彰さん自身のパックに仕込みはなかった模様。
このオチは知り合いにもプレリ箱からプリズムが2枚、影響力が2枚とかいうパックを引き当てた方がいまして、それをヒドくして使わして頂きました。
けどコラム系じゃなくて小説系にするんだったら、出てくるヒトがどんなキャラ性か分かるようなアクションが増えたらもっと良くなると思います。
読んだ感じ、お兄さんがツンデレなのくらいしかそういうアクションが無い?
コメありがとうございます、あくまでも私個人的な主観が入ってますので、本当のところはわかりませんけどこういう考えもあるよねってなぐらいにとっていてだけたら幸いです。
キャラクターに関しては仰る通りがキャラが立って無い感がありありですね、 また次回あれば改善していきたいと思います。